04/02/2023

2023.2.4(土)#日々の聖句 #ローズンゲン 聖書のことば

くじによって選ばれた本日の旧約聖書のことば
創世記28章22節
ヤコブの誓い:そこで私は、あなたが与えてくださるすべてのものの十分の一をあなたに献げます。
 
旧約聖書に応じて選ばれた本日の新約聖書のことば
コリントの信徒への手紙二9章6節
惜しんで僅かに蒔く者は、僅かに刈り取り、豊かに蒔く者は、豊かに刈り取るのです。
『聖書 聖書協会共同訳』より引用・利用

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十分の一
 
本日の旧約聖書である創世記28章の物語は、私の最も好きな聖書物語のひとつです。石もて追われるかのように、生まれ育った家を離れなければならなかったヤコブにとって、自分を守る神はいるのだろうか。そんな疑念が彼を襲います。しかし、そんなヤコブのもとに神は現れます。私は決してあなたを見捨てないとヤコブに告げられる神。その神との出会いに、ヤコブは「私は知らなかった」と告白します。そして、ヤコブは枕にした石を立てて、神に誓いました。あなたが与えてくださる十分の一を、あなたへお返ししますと。
 
私は、ヤコブの思いというものを深く探りたいと思いました。ヤコブにとって、両親、特に母親の思惑に翻弄された自分がありました。神のお告げとは言え、そのお告げを実現するために母リベカの行ったことは、結果としてヤコブ本人が多くの怒りと悲しみ、恨みを買う結果となったのですから、ヤコブ自身にとっては「とんだとばっちり」のように感じたかもしれません。もちろん、ヤコブにもいささかの野心のようなものがあったことは事実です。しかし、ヤコブは自分のしでかしたことを振り返るよりも、自分の身の上に起こった「不幸」のことで、頭も思いもいっぱいになったに違いない。そのように思うのです。
 
そんななかで、転がってあった石を枕にして野宿するしかなかった。すべてを失ったと思われたヤコブに、天のはしごを行き来する天使たち、そして現れる神の御声が、ヤコブの意識を根本から変革させました。ヤコブに与えられたのは、神が傍らにおられることへの安心でした。すべてを手に入れ、しかしすべてを失ったと思っていたヤコブにとって、決して失わないものがあったのです。神という、自分とともに人生を歩んでくれる御方です。
 
ヤコブの感じた安心こそ、感謝の思いを生み、決して失っていなかった物のうちから、その少しだけでも、そのことを気づかせてくださった神にお返ししたい。そのヤコブの思いこそ「十分の一」という言葉に込められているのだと、私は受け止めました。ヤコブは誰からも強いられたりすることなく、あくまで自分自身の自発的な思いで、十分の一を献げるという決断をし、それを果たし続ける人生というものを営むことができたのだと。
 
さて、私はあえて誤解を恐れず申し上げるならば、教会は「十分の一」という言葉を、あまりにも「制度化」しすぎてはいないだろうかと感じるのです。教会という組織を財政的に支えるために、十分の一という言葉を、聖書に書かれている鉄則のように掲げているのではないだろうか。そのように思わされるのです。もちろん、こういう財政的なシステムというか制度に助けられて、私などは牧師としての働きができているわけですし、教会という組織を維持するためにも、財政的なことを考えるのはとても大切なことであるのも事実ですので、私が上に掲げた思いは、矛盾しているようにも思えるかもしれません。
 
そのうえで、ヤコブが感じたように、神がすぐそばにおられたのに気づかなかった、気づけなかった。しかし、傍らにおられると分かった今、神とともに営む人生があることに感謝しよう。この思いをなによりも大切にしたい、そう思ったのです。十分の一というのは、その結果論であって、制度化するための根拠とは決してなり得ない。何にも妨げられることなく、強要されることもなく、私と神とのあいだにおいてなされる私の自発的な決断において、十分の一という言葉を選び取るなら選び取りたい。そう改めて思わされました。
 
巧みに人の心を操りながら、自発的という決断をしたかのように思わせて、結果としてその人が「生活できないような」額の献金をささげさせる。旧統一協会のようなカルト宗教が用いる常とう手段として聖書の言葉が用いられることが、私たちを生かそうとする神の願いではないことは明らかです。本日の新約聖書の言葉にもありますが、惜しまず豊かに蒔く(ささげる)ことで、多くを刈り取ることになるという聖書の言葉なんかは、用い方次第で、人を生かすどころか、人を殺す言葉にもなりかねない。だからこそ、ヤコブの思いを大切にしたいと、私は本日の聖書の言葉を受け止めたいのです。私が「カルト」にならないために。
 
皆さんの一日を共に歩んでくださる神がおられることが豊かさを生む。そんなひとときでありますように。お祈りいたします。

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